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暗号を肌身に巻いて任地へ向かう三十歳の男が、神戸からの船上で見た光景を綴る。隣席の支那人の親子のうち、痩せ衰えた美しい娘の妖しい瞳に男は心を奪われる。父親には物を掴む前に空中へ英字を描く癖があり、娘は左手にだけ白い手袋をはめている。やがて父親は、墓に葬ったはずの娘が真夜中に蘇って戻ったという恐ろしい身の上話を語り始める──。