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兵蔵はペンキ屋の主人であったが、毎日なにもせず過ごしている。このあたりでは看板を新しくする習慣がほとんどなく、仕事の依頼が来ないのである。周囲が懸命に働く中、彼は戸口を出たり入ったりしながら、ぼんやり空想にふけるばかりで、女房は質屋に持っていく品物も尽き、子供のものまで手放す始末であった。ある日、町の老舗の菓子屋から看板の塗り替えを頼まれる。番頭からは、だれでも振り向くような美人を描いてほしいと注文がつくが──。